第3世界を南、資本主義、社会主義の側を北と略称し、両者間の問題を南北問題と呼びます。社会主義国のなかには工業化の水準が南と変わらないほど低いところもあり、北とは先進工業国のことだと定義したほうがよいという考え方もあります。南北問題とは南北間の格差のことだと定義するのが普通ですが、それは正しくない。西川潤『世界経済入門』(岩波新書、1988年)は、「南北問題の本質」は、南の国々が「北の先進国との経済関係調整にのりだしたことにある」と述べていますが、その通り。格差があっても誰もそれを問題だと感じないなら、問題ではないのです。このことは、労働問題であれ、消費者問題であれ、すべてについて言えます。当事者の片方が「これは問題だ」と言っても、他方はどうして問題なのかがわからないでいることが多いということも、「何々問題」に共通している特徴です。
所得が世界のトップクラスになっても、生活かみすぼらしくみえるのは、日本の住宅が貧弱だからでしょう。遠くて、狭い住宅でも、平均的なサラリーマンにはなお高嶺の花です。首都圏のマンション価格は平均6,500万円で年収の9倍、大阪圏でも7.5倍の5,500万円もします。政府の「生活大国5か年計画」は、年収の5倍で住宅が取得できるようにすると公約していますが、よほど努力をしなければ、絵に描いた餅になりかねません。最大の障害は、土地の値段です。日本不動産鑑定協会の調べによると、東京の地価はニューヨークの89倍、ロンドンの33倍、パリの23倍と異常な高さです。公示地価の8割といわれる相続税の路線価でみても、全国平均で1平方メートル当たり36万7,000円ですから、庶民にはとても手が出ません。
「京都議定書」と呼ばれるこの協定では、欧米先進国と日本が排出量を削減する義務を負い、欧州連合(EU)が8%、アメリカが7%、日本が6%、クロアチアが5%、ロシアがO%などと決められた。ところが、「京都議定書」にはさまざまな欠点があった。そのひとつは、世界一の経済大国であり、二酸化炭素排出量第1位のアメリカが批准せず、2001年に議定書から離脱してしまったことである。理由は産業界の反発が大きかったことと、途上国が参加していないことに対する不満からだった。二酸化炭素の排出量を抑えれば、経済発展にブレーキがかかってしまう。それに、中国やインドは経済発展が著しく、二酸化炭素の排出量も先進国並みに増大しているはずだが、削減義務を負っていない。これではとても批准できない、というのがアメリカの言い分である。ふたつ目の欠点は、「京都議定書」では1990年の数値を基準に削減目標が決められたことである。たとえば日本の場合、90年の数値からマイナス6%、EUの場合、マイナス8%の削減が義務化されており、8年から5年間で実行することになっている。ではなぜ、1990年が基準とされたのか。それはヨーロッパ諸国に都合がよかったからだ。1990年といえば、東西冷戦が終わったばかりで、東ヨーロッパ諸国には効率の悪い発電所や工場がたくさんあった。そのため、それら旧式の設備さえ入れ替えれば、比較的容易に8%の削減目標をクリアできた。いっぽう、日本にとって6%の削減は厳しい数値だった。日本ではすでに省エネがすすんでおり、これ以上削減しようがない状態だったのだ。
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